Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “夏だってサ”
 


ねえねえ知ってたぁ?
暦っていうのの上では、実はもう“秋”なんだって。
立秋っていうひがもう来てて、
でもそれって毎年お盆より前に来る日なんだけど、
その日は秋が立つって書くその通り、
今日から秋ですよって、
俳句とか和歌とか詠む人に、
判ってますかってとーいつさせる目印みたいな日なんだって。

 「いや、そればっかでもないけどな。」

つか、むしろ農業する人たちへの目安というか暦なんだがなって、
ヒル魔くんがゆってて。
そしたら桜庭さんが、

 「も一つ付け加えると、
  昔の暦では二月の立春がお正月っていう ずれ方してたから、
  カレンダーにある旧の暦以上に、いろいろ後だったりしたらしいけどね。」

 「凄ぇよな、それ。」

 そこまで差し替えられちゃあ、随分と混乱もしただろに。

 うん。
 結婚式の日程をネ、古い暦での約束だと思ってたら、
 新しい方の暦で進められてて。
 当日、式場だった神社に現れないのを、
 何をのんびりしてるんだって叩き起こされた
 困った新郎ご一家の話とかあるそうだし。

 うあ、それってお嫁さんかわいそう。

 そうだよな、ただでさえ重装備すんのになぁ。

 でもお嫁さんとファッションモデルは、
 根性と心意気で
 時に何キロにもなるゴージャスなドレスや打ち掛けを着て
 堂々と歩くって言うよね。

 そんだけの覚悟が要るんだよ、きっと。

 偉いんだねぇ。



  …………もう良いかな、君たち。



いつもの脱線はともかく。(笑)
そういうことなので、
この日から時季のご挨拶は“暑中”から“残暑”に変わる。

 「そーなんだ。でもまだお盆じゃないのにねぇ。」
 「それどころか、
  今年は立秋過ぎてから、本格的な夏になったとこが多いのにな。」

ブルーベリーとラズベリーとイチゴを
バランスよくミックスして凍らせたのをスムージーにした、
オールベリー・スムージーをうまうまと味わいつつ、
深いアーバンチャコールの色合いがつややかな光沢の下に沈む、
なかなかに品の良いテーブルに、
葉書を何枚も取っ散らかしておいでの坊ちゃんたちなのは、

 『お世話になっている人へ、
  暑中お見舞いや残暑お見舞いの葉書を出しましょう』

なんていう宿題があったから。

 『いつから文部省は郵政省とこんなカッコでタッグ組んだんだ』

 『それ言ったら、
  国税庁の納税関係や厚生省の医療関係とか、
  いろんな通知だなんだ郵便で配布されてる時点で手ぇ組みまくりだぞ』

第一、宿題といっても
誰へ出したかとかまでの詳細は、それこそ個人情報の何とかに触れるので、
先生側は確認のしようもないこと。
よって、自己申告(プラス保護者のハンコ)で
“何枚出しました”と報告するという至ってアバウトな代物なのだが、
宛名はともかく、どんな図柄にしたかも提出せねばならないので、
詰まるところ、出そうが出すまいが やらぬワケにはいかぬところが、

 「チッ、抜け目がない。」
 「こらこら、そんなところに感心しないの。」

という訳で、
今年は特に、あまりの酷暑ということもあって、
大学生のお兄さんたちの合宿にお付き合い出来ない瀬那くんと一緒に。
宿題の残暑お見舞いのおはがきを書いてる、
小悪魔さんこと妖一くんだったりするのだが。

 「何で桜庭がいるんだ?」

王城はいつもの予定ならドイツの古城での合宿だろにと、
金茶の双眸ちょいと尖らせて、賊学の鬼軍曹様が問えば。
ふんわりした甘い色合いの髪を周囲の明るみにけぶらせて、
ふふんと微笑った相変わらずのイケメンが言うには、

 「王城も協賛してるスポーツイベントのMCを任されちゃってね。」

全国中継もされるそれが今週末に川崎スタジアムで催されるんで、
特別一時帰国って対処をされちゃったのサと苦笑したのへ、

 「気ィつけろよ。
  王城みたいに選手層が厚いとこは、
  そういう隙を後輩から狙われんだからよ。」

そもそもからして
余裕でレギュラー守れるから帰国して良いって
対処されたかどうかも怪しいぞなんて。
相変わらずの辛口な物言いをする妖一くんなのへ、

 「はい、肝に命じます。」

言われずともだというのもあったし、
この子がこういう言い方をするときは、
子供だからという遠慮会釈のなさとは一味違って、
やや案じてのこと発破をかけているのだということ、
さすがに把握もしているものだから。

 “何か面映ゆいよねvv”

むしろ擽ったいくらい。
葉書の図案というと年賀状でしか描いたことないよおと、
困ったように小首を傾げていたセナも、
掃き出し窓の外に置かれたアジサイの鉢に気がついて、
それをクレヨンペンシルで一生懸命に写生しておいでだし。
妖一くんはといえば、
賊学の合宿所の近所の浜で拾った貝殻を写メしたの、
上手にデザインしてちょっと小粋にコラージュしておいで。

 「姉崎せんせえに出す他はどうするの?」

原画さえ手書き手作りなら、
それをプリントしても可だそうで。
セナくんは桜庭さんにアドバイスいただいて、
残暑お見舞いのご挨拶とか、近況報告の書き方とかを頑張っておいでで。
それの向かい側に陣取ってた妖一くんはと言えば、

 「俺は、これへプリントするだけだ。」

空いてたお椅子に置いていたデイバッグから取り出したクリアファイル。
そこには10枚ちょっとほどの葉書が入っており。

 「…って、これ住所がもう書いてあるんだね。」
 「おうよ。本人に書かせたし。」

  ……………はい?

 「ルイとかツンさんとか、銀に、こっちはえっとぉ。」
 「うあぁ、もしかして賊学のメンバーに書かせたんだ、これ。」

だってそれが一番確実だしよと、胸を張ってる坊やだけれど。

 「…そうなんだvv」
 「そんなことないからね、セナくん。」

あんまり何でもかんでも
ヨウちゃんのやることを参考にしないようにねと。
こそりとクギを刺すのもまた、お目付役のお勤めだから。
おチビさんたちの暴走、どうどうと宥めるアイドルさんなのへ、

 「大変そうだねぇ。」
 「なんの、あのくらいは余裕でこなせんとな。」

カウンターから遠目に眺めておいでの、
こちら“茶房もののふ”のスタッフの皆様も。
小さな悪魔だか天使だかに振り回されておいでの
面倒見のいいイケメンさんを、ほのぼの見やっておいでの模様。
そこへ、

 「カンベ、くうも手紙すゆ。」
 「おや、誰に出すのかな?」
 「んと…よーいちっ!」

小さなお手々に太巻きクレパスを握って、
こちらの和子様も交ざりにと飛び出しておいでで。
猛暑、酷暑の夏ですが、
皆様もどうか、お健やかにお過ごしくださいますように。


  
残暑お見舞い申し上げます




     〜Fine〜  13.08.11.


  *いやはや、ホンマに途轍もない暑さですよね。
   ニュースでインタビューを受けてる人が
   暑い暑いと言ってるのを見て、
   そんでもそうやって出掛けてるだけ凄いと
   こちとら感心してしまいます。

  *東京やその他の地域では、
   立秋からいきなり暑くなったとか言われてますが、
   こっちなんてろくすっぽ雨も降らぬまま
   七月からずっと切れ目なく暑いんですから困ったもんです。
   大丈夫なのか、近畿の水瓶…。
   この酷暑、あと1週間は続くそうなので、
   皆様もどうか、ご自愛くださいませね?

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv

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